礼を尽くして、成果を出す
「日本酒のような伝統産業への新規参入は大変ではないですか?」とよく聞かれます。私はいつも「大変ですよ」と答えますが、「ただ、それは当たり前のことなんですよ」と続けます。
2011年、当時26歳でこの業界に入ったときには、「日本酒ベンチャー」「日本酒スタートアップ」という言葉はなく、「日本酒ウェブメディア」や「高級日本酒ブランド」など、見たことも聞いたこともありませんでした。
この産業では、血縁や免許によって事業が引き継がれていくことが一般的ですから、外からの新規参入はほとんどありません。そのため、「日本酒のベンチャー企業をやっています」と言っても、例がなさすぎてピンとこない方がほとんどでした。
最初は、「この人は何者なんだ」「東京から怪しい人が来たんじゃないか」と、日本酒に関わる方々にたくさんの心配をかけてしまったと思います。また今振り返れば、厳しい態度だけでなく、意地の悪いと思うような行動をとられることもありました。
ただ、そうなるのも分かるのです。これまでにいなかった存在が現れれば、その真偽を見定め、必要に応じて排除したいと思う自浄作用はあって然るべきこと。新規参入の私に向けられる品定めとも言える態度や行動は、私には自然なことだと思えました。
だからこそ、自分自身にも、事業のメンバーにも言い続けました。
「礼を尽くして、成果を出す」と。
まずはこちらが、日本酒産業の先人たちに最大限の敬意と配慮を持つ。ときには頭を下げて、教えを請う。そして、自身も成果を出すことで、お客様にとって、社会にとって、価値があることを証明する。これを守り続けていけば、自ずと産業の中に自分たちの居場所ができると考えられました。
日本酒産業に入って12年が経ちますが、たくさんのお客様に支えられ、多くのパートナー企業に恵まれ、2019年からは国税庁の審議委員として、酒税法の在り方にまでコメントをさせていただけるようになりました。
しかし、私たちはまだまだ若い。企業としても、ブランドとしても、これからです。
「礼を尽くして、成果を出す」
これからも、変わらぬ姿勢でいつづけたいと思います。