「香りがまろやかで、日本酒が苦手な方でも飲みやすいと思います。

熟成されているのでとろみがあり、甘味があってのどごしもよく飲みやすい。
口の中でやさしい梅酒のように香り、さらっとのどを通り、お腹でアルコールを感じる。

肉や脂の多い料理より、白身魚・山葵・鮑など、香りのあるあっさりとした食材と合いそうです」

今まで人類が味わったことの無い甘味の頂点を見つけてしまった。
日本酒の熟成酒は今まで何度も味わったことはあるが、こんな液体を目の当たりにし、驚いた。

氷温熟成を14年、時間をかけ丁寧に綺麗に大切に守られてきた液体の骨格は、ピュアで瑞々しく透明感に溢れていながら、月日の経過でしか辿り着くことができない洗練された味わいに昇華している。
更に樽熟成させることで艶っぽい色気を纏い、痒いところにギリギリ手が届いた気持ちよさに近いような感覚が、私の心を興奮させた。

味わいは、濃厚な蜂蜜や、ドライフルーツを作る過程の果実がドライな香りに変わる狭間の瞬間を思わせる妖艶なアロマ。レーズン入りブリオッシュを手でさいた時のわずかな蒸気の香りを感じます。

今までに感じたことの無い甘味の色気が、私の味覚だけでなく、脳の隅々まで幸せに満ちていく。
あぁ、美味しかった。

とんでもないお酒に出逢ってしまった。

何も説明する必要がない。飲んでさえもらえばいい。
こんなにも美しい熟し方があるのか。
日本のみならず世界で勝負できるお酒。

綺麗に透き通ったレモンイエローの色。
ふんわりと漂うヴァニラやカラメルの香り。

口に含むと、柔らかくなめらかな甘味が広がり、そこに日本酒ならではの旨味が美しく溶け込んでいる。舌のうえにのった感覚がとてもセクシーだった。
そして、素晴らしい余韻。熟成酒の真髄は余韻にあるのではないかとさえ思う。

ただ美味しいだけでなく、品格と自信をもたらす味わい。
その凛とした芯の強さは、飲む人に寄り添いながらも、独自の主張を放ち、美しい記憶を残す。礼比という日本酒は、ただの飲み物ではなく、人生を教えてくれる気がした。

私もこんな年の重ね方をしたい、そう思わせてくれる一杯でした。

比ぶるべくも無い体験を。

それが仕舞われているのは氷に閉ざされた黄金卿。信じたものだけが手にすることを許された静謐なる甘露。長く閉ざされていた扉を拓いた先には、黄金に咲く百合の華。その華の精霊はボトルからグラスへ、揺蕩うように御霊が遷ります。

蠱惑的で、ヴァニラの香気を纏った蘭奢待。時を待ちながらゆっくりと熟した果実の香りは、さながら弦楽四重奏の響きとなって立ち込めます。氷温熟成のみが成し得た耽美な蜜は口中で淑やかにひらき、ゆったりと踊り奏でるその様から誰も目を離せなくなるでしょう。

舞い終わりはゆっくりとゆっくりと降り注ぐ金色の霧雨。どこまでも揺蕩う柔らかなケープとなって貴方の側に。天与の雫が身に入る事で、満ち足りた安心感と幸福感を叶えてくれます。

この黄金の蜜が、その手に在る充足を。

ハチミツのような品のある甘味、ドライフルーツを思わせる凝縮された酸味、重厚なバターや出汁を感じさせる豊かな旨味、さらに落葉を踏みしめるような大地のニュアンスも感じます。

たった一口にさまざまな香味が心地良く共存し、それらをひとつずつ確かめるように、またグラスを傾けてしまう。好奇心を刺激する一本でした。