56年前の祖父と出会う
先日、1970年に書かれた一冊の経営書を手に取りました。
父との会話の中で、祖父がかつて経営コンサルタントとして活動しており、一冊の本を書き残していたことを知ったのがきっかけです。インターネットで調べると今も購入できることがわかり、すぐ取り寄せて読んでみることにしました。
半世紀以上前に書かれた本ですから、どこか価値観の相違を感じてしまう内容なのではないか、という先入観もありました。しかし読み進めるうちに、その予想はすぐに覆されました。そこに記されていた内容は、いま読んでもまったく古びていない。それどころか、現在の経営や社会のスタンダードと一致していました。
たとえば、経営者の本質的な役割について、祖父はこう記しています。
「経営者は何をなすべきか。経営者の機能は何かといえば、それは一言にして『意思決定』であるといえよう」「戦略的意思決定とは、経営者にしかなし得ない大局的なもの、という意味である」(『業務管理のポイント730項』より抜粋)
経営者の仕事とは、「意思決定である」と。
現代の経営環境においても、この定義はまったく色褪せていません。さらに読み進める中で、私が強い衝撃を受けたのが、性別にとらわれない評価の重要性が明確に書かれていた点でした。
「女子に対する偏見を改める。前述のように、女子の能力は男子のそれに比較して格段の差異がある訳ではない」「給料、賞与、昇進についても、性別ではなく能力差によって評価することを基本とすること」(『業務管理のポイント730項』より抜粋)
1970年という時代背景を考えれば、この主張がいかに先進的であったかは明らかです。男女雇用機会均等法が制定されたのは1986年。その16年も前に、祖父は思想として同じことを断言していました。
おそらく当時、この考え方が社会に広く受け入れられることは難しかったと思います。当時の社会構造や人々の価値観を考えれば、決して不思議なことではありません。しかし半世紀を経た現在、この主張は「あるべき姿」として、多くの人に共有されています。
ここから、私は一つの普遍的な教訓を学びました。
たとえその時点で社会に受け入れられなくても、人々が本質的に望む未来であるならば、それを掲げ続けるべきだということです。その意志を持ち続けること自体が、やがて未来を現実にしていく力になるのだと、時を越えて祖父の言葉に教えられた気がします。
この学びは、日本酒の未来を考える私たちの思想と重なります。
日本酒は長らく「成長しない産業」だと言われてきました。高級酒市場など存在しない、あるいは成立しない、と語られることも少なくありませんでした。それでも私たちは、日本酒にはもっと大きな可能性があると信じ、その価値を掲げ続けてきました。
高級酒市場の開拓は、単なる価格の話ではありません。日本酒が経済的に発展することは、結果として文化的な発展につながり、より多様で、多彩な未来をもたらすと考えています。
いまはまだ、その未来が遠く見えるかもしれません。しかし、1970年に書かれたこの本が、半世紀を経て当たり前の価値観になったように、正しい未来は必ず社会に共有されていくものだと思っています。
日本酒の未来は、暗くありません。むしろ、この先にはまだ誰も見たことのない可能性が広がっている。その未来を信じ、掲げ続けていくこと。それこそが、私自身、そしてSAKE HUNDREDが貫く信念です。










