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自称“ラグジュアリー”の滑稽さを超えて

SAKE HUNDREDを創業してから、7年が経ちました。
日本酒メディア「SAKE Street」さんの調査によれば、SAKE HUNDREDの誕生前後で「1万円以上の日本酒の発売数は8倍以上」「発売される日本酒の平均価格は20%上昇」したそうです。
高級酒市場を切り拓き、日本酒に関わるサプライチェーンへ利益を還元し、産業としての持続的成長を実現することを目指す私たちにとって、これは大変嬉しい変化であり、わずかながら市場に貢献できたのではないかと感じています。

しかし一方で、その功罪の「罪」の側面も見え始めています。
プレミアム日本酒において「ラグジュアリー」という言葉が、あまりに軽く、単価が高い=ラグジュアリーという認識になっているように感じます。実際に、3万円を超える日本酒が発売されるたびに「ラグジュアリー日本酒」「ラグジュアリーブランド」といった表現が並ぶ光景をよく目にします。高級酒市場の開拓が必要であることは自明の理でありますが、単価の高さだけを追い求め、その内容の充実に目を向けない商品が増えていくことは、持続的な成長を阻害する可能性があります。

では、何をもって「ラグジュアリー」と言えるのでしょうか。
これは極めて難しい問いです。

そもそもラグジュアリーかどうかは、自らが宣言するものではなく、ブランドの活動を積み重ねた結果として、顧客や社会が総体的に抱く印象によって決まるものです。
顧客が感じる価値は多岐にわたります。品質はもちろん、評判や利用者、社会貢献性、成長性、働く人々の姿勢や思想、歴史、流通環境、研究開発、販売チャネル、海外での評価……。こうした多様な価値軸の中で成果を積み重ねていくことで、初めて「一人前のブランド」と呼ばれる世界なのです。

私たちSAKE HUNDREDは、自ら「ラグジュアリー」という言葉を掲げ、そのように振る舞うことに、ある種の滑稽さが伴うことを理解し、それでもあえてこの言葉を使い続けています。なぜなら、日本酒市場において「ラグジュアリー」という概念は、これからの100年においてますます重要になると考えるからです。

薄利多売から脱却し、酒離れが進む中で高い価値を提案していくことは、日本酒文化の持続と成長のために必要不可欠な一手です。本場のブランドから見れば笑止に映るかもしれません。ですが、掲げなければ決して到達できない。そしてその挑戦の積み重ねこそが、冒頭で触れた市場全体の平均価格上昇や高級酒の急増へとつながっているのだと思います。

「ラグジュアリー」という言葉が乱用されることにはネガティブな側面もあります。
しかし同時に、その言葉を用い、考え、実践し、試行錯誤を重ねる中から本物が生まれるのも事実です。今はまだ幼い市場かもしれませんが、私たちを含め、この領域で奮闘する挑戦者の中から、やがて大きな成果を上げるブランドが現れるはずです。そして、日本酒が背負ってきた歴史や伝統、精神性や技術は、必ずやその世界に届くと確信しています。

私たちはこれからも、新しい「ラグジュアリー」という世界を切り拓いていく強い覚悟を胸に、挑戦を続けてまいります。

2025/10/03

SAKE HUNDRED
Founder
生駒龍史

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