「武蔵 by アマン」 × 百光 —
鮨と日本酒のさらなる可能性。革新は、細部に宿る。

鮨と日本酒。伝統的な食文化を表す組み合わせとしてこれ以上のない幸福なペアリング。一見、両者のペアリングは完成されているようにも思えますが、この“定番の組み合わせ”にさらなる可能性を感じさせる一軒があります。大手町にある国内屈指のラグジュアリーホテル「アマン東京」34階にある鮨店「武蔵 by アマン」。妥協のない“仕事”を施した江戸前鮨に、日本酒とワインを熟知したソムリエが合わせるのは、SAKE HUNDRED『百光』。こだわりを極めた鮨と日本酒のペアリングは、ワインと鮨が初めて出会ったころに似た、鮮烈な印象を感じさせます。 

世界一の酒リストには『百光』が必要だった 

「『世界一の日本酒リストを作りたい』と思い描いていた時、オンリストしたいと決めていた銘柄の一つが『百光』でした」

「武蔵 by アマン」と『百光』の出会いを振り返るのは、「ジャン・ジョルジュ トウキョウ」やシンガポール「WakuGhin」など国内外の名店での経験を持つ、ソムリエ兼酒匠の藤原龍さん。

同店のドリンクを一手に任されるソムリエは、『百光』には世界から来るゲストを満足させるだけの魅力があったと言います。

ソムリエ・藤原 龍さん

 「全国各地の銘酒を取り揃えるにあたり、名だたる日本酒はすでに知り尽くされていることも多いため、ブランドと味わいの両方において新鮮な日本酒を求めていました。ただ、アマンで扱うならば、その新鮮さに加えて、海外の一流のお客様にも自信をもってお出しできる本物でなければならない。

飲んだ時に個性に引っ張られてしまう日本酒も多くありますが、『百光』の味わいはエレガントで、誰もが“美味しい”と感じる味わいなんです」

この、誰もが「美味しい」と感じる味わい、を実現することこそ、『百光』の生まれた所以。そのために極限まで研ぎ澄まされた上質な味わいを、藤原さんはエレガントと表現します。

「吟醸香が強く主張するタイプの日本酒ですと、インパクトはございますが、食事への寄り添いという観点からすると、食中酒に適しているとは言えません。吟醸香のほどよい主張がありつつ、けっして甘過ぎない。それでいて心地よい余韻が続くのが、『百光』のエレガントさです」

 
シャリの輪郭にフィットする、心地よい硬質感 

 「『百光』の味わいは、ユリの花のような香りと、淡い蜜のような甘やかさが感じられ、後半にかけてわずかに硬質さを感じるのも特徴です。山形県産の酒米『出羽燦々』は冷涼地域で栽培される硬質米でもあるため、そのニュアンスが味わいにも出ているのだと思います。

「武蔵 by アマン」では、山梨県北杜市で親方がみずから育てた“ひとめぼれ”を使い、米ひと粒ひと粒の輪郭がしっかり感じられるシャリに仕上げています。そのため、『百光』の質感とも足並みが揃うと感じました」(藤原さん)

武蔵弘幸さん
親方・武蔵 弘幸さん

「武蔵 by アマン」の鮨は、親方・武蔵弘幸さんのシャリへのこだわりを抜きにしては語れません。18歳で鮨の世界に入って以来37年、鮨の何たるかを突き詰めてきた武蔵さん。鮨にとって一番大切なのは、“米”だと思うに至り、納得のいく鮨を出すために、2019年からは自身で米を作ることにしました。

「米農家に頼りっきりでは、自分が求める完璧な米を作ることはできないと感じたんです。いまは甲斐駒ヶ岳の南アルプスの湧き水が流れる山梨県北杜市の農地に、自分たちで苗を植え、米作りをしています」

極力農薬などには頼らず、隔週で現地を訪れて、雑草を手で摘みます。猛暑が続く真夏は、日が昇る前に農作業を終わらせる必要があるため、夜中に都内を出発します。

納得のいく握りを出すために、田んぼからつくるシャリ。「けっして硬めに炊いているわけではないのですが、精米や塩と酢の塩梅、温度管理をしっかりしているので米の一粒ごとの輪郭を感じてもらえると思います」と武蔵さんは話します。

一杯の中で、ネタごとに焦点を変える

鮨では通常のペアリングの「一皿一杯」のように、一貫に対して一杯を提供するのは難しい。ペアリングにおいては一見、ハンディキャップのように思えますが、そこにソムリエ・藤原さんの独自の考えがあります。

「一杯を飲む間にも何貫かのネタが出ますから、同じ日本酒であっても、ネタごとに焦点の当て方に変化をつけています。『百光』には緻密な、酸味や甘味、旨みといった複数の味わいの要素があり、鮨にも、酢で締める、昆布で締める、といった江戸前の“仕事”で一貫ごとに味わいの方向性が違います。この握りは“酸”、この握りは“旨み”で合わせるといったように、ペアリングのゴールが変化していくわけです。そういったペアリングは、鮨ならではの面白さです」(藤原さん)


鮨とのペアリングにおいて、一見ハンディキャップのように思える要素を“強み”ととらえる。食と酒への造詣の深さから出てくるその言葉から、鮨と日本酒のペアリングに秘められた可能性の大きさがうかがえます。

 江戸前鮨×『百光』だからこそ叶う、3つの新ペアリング 

「武蔵 by アマン」と『百光』だからこそ味わえる、一貫ごとに味わいの方向性の異なる3つのペアリングについて、藤原さんにご紹介いただきました。

「愛知県蒲郡産 車海老 茹で置き」

藤原さんが「『百光』と一番合う」と語るのは、甘味を軸にした一貫。火を通すことでじっくりと甘味を引き出した車海老です。

車海老を「茹で上げ」で仕上げる店が主流となるなか、武蔵さんが選んだのは江戸前寿司の技法のなかでも一番伝統的な「茹で置き」。車海老のもつ、甘味を最大限に出すための仕事です。「茹で上げてすぐのレアな状態も試しましたが、やはり海老のみその苦味が甘味に変わるのは半日以上寝かせたもの」と武蔵さん。

「まずは直球のペアリングです。海老は生でもボイルでも、ネタの甘味が『百光』と非常に高いレベルでマッチします」(藤原さん)

「熊本産 小肌 酢締め」

2貫目は、酸へのアプローチを軸にした小肌とのペアリング。九州産を使用することが多い小肌は、ほどよい脂と身の厚さが特徴。締めた直後は塩気と酸味が強いため、ひと晩寝かせることでベストな味わいが完成します。

おろした直後に塩を振り、通常14分、長ければ25分と、脂の乗り方や水分量の違いで漬ける長さを変えます。その見極めが非常に難しく、長い経験の中で日々失敗を重ねてようやく今に辿り着きました。武蔵さんが「37年の経験が一番モノを言う」と語る一貫です。

「小肌の酢締めは、ワインだと酸や青魚特有の匂いと脂質がバッティングしがちですが、日本酒はワインに比べて酸量が少なくpHも異なります。小肌の酸味から『百光』のやさしい酸味へとつながり、エレガントな吟醸香を感じるまでが非常にスムーズです。 

さらに 酸味だけでなく小肌の塩味、甘味のアタックも『百光』が受け止めることでまろやかになり、最後は華やかなリフレッシュ感が残ります」(藤原さん)

「青森県産 平目 昆布締め」

3貫目は、青森県産の平目。身がほどよく締まり、昆布で巻き締めることでさっと味が入ります。寝かせた後のねっとりとした旨みは格別。ほかにも甘酢漬けにし、一味とふぐ葱を忍ばせて提供することもあるのだそう。

「最後は、同じ江戸前でも異なる締め方による昆布の“旨味”にフォーカスしたペアリングです。昆布締めの魚は海藻特有のヨード香を感じやすいので、合わせるワインは限られてくるのですが、ほのかに優しい旨みを持つ『百光』ならぴったりと寄り添うことができます」(藤原さん)

あくまで料理に“寄り添う”ことに終始しつつ、3つの異なる方向から鮨とのペアリングを提案する藤原さん。甘味を軸に純粋な一体感を奏でる車海老、江戸前の“仕事”にフォーカスした小肌、そして昆布と『百光』の旨みを合わせた平目と、あわせる鮨によって『百光』の表情すら変わる自在なペアリングです。 

こだわりを極めた鮨と日本酒でなければ実現しない、味の共演。『百光』と「武蔵 by アマン」の出会いから、鮨と日本酒の新しい可能性が始まろうとしています。 

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藤原 龍
ふじはら りょう

南青山「ブルーノート東京」からキャリアをスタートし、「ジャン・ジョルジュ トウキョウ」、シンガポール「WakuGhin」などの名店に勤務。ソムリエとしてのキャリアを積むかたわら、日本酒にも傾倒。唎酒師としての表情も持ち、日本酒ペアリングにおいてもその才覚を存分に発揮する。2018年、「武蔵 by アマン」開店と同時に同店のマネージャーに就任。ホテル館内のレストラン、カフェや客室のワインリストを手掛ける。


アマン東京 武蔵 by アマン
住所:東京都千代田区大手町1-5-6 大手町タワー
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